2025年度11月例会
2025年度11月例会連絡書
下記のように11月例会を行いますのでお集まり下さい。
会長 小澤 純
記
| 日時 | 2025年11月29日(土)18:30〜20:30 |
| 場所 | 東京芸術劇場 ミーティングルーム5(池袋西口) |
| 発表 | 森広樹、二宮洋「現代日本ピアノ作品の演奏表現について ~森、及び二宮のピアノ作品を取り上げ質疑を交えて〜」 演奏:金子恵、鈴木今日香 |
| 会費 | 会員:無料/非会員(一般):2,000円/非会員(学生):1,000円 |
「概要」
森 広樹「Resonance of Narrative:No.1」 演奏:金子 恵
昨今、“ナラティブ”という語は言語に限らず、「音程・音高・音質・強度」といった音楽的観点からその性質が語られることがある。特に、従来は捉えることが困難とされていた非言語的コミュニケーションの分野においては、音楽的性質に基づく応答的なやり取りから派生する相互作用を音声分析によって可視化することで、音楽的ナラティブ生成過程の重要性を唱える研究が多数進められている。
本作は、一つの旋法が模倣され、ヘテロフォニックな表現を経て、最終的にはポリフォニックな展開を遂げる過程から、音楽的ナラティブが伝播し、語り継がれる中で共鳴する様を表現しているピアノ独奏曲である。楽曲が推移する方法としては、古典的な音楽要素を軸とした作品とも言えるだろう。
なお、本作はヌーヴェル・ソノリテ主催、2025 年10 月13 日にすみだトリフォニーホールで開催する金子恵「Piano Recital Vol.5」で初演されるために書き下ろした小品である。
二宮 洋「過ぎ去る喧噪」 演奏:鈴木今日香
この「過ぎ去る喧噪」と題されたピアノ曲は、1997 年5月に手掛け9月に完成した。
本学会会員である三谷 温氏によって、1997 年11 月17 日にドイツ・ケルン市における同氏が出演するコンサートで、初演されるために書き下ろしたものである。
その後、本務先であった東海大学の教え子達によって再演され続け、期せずして教育的な機能をもたらす結果を得ている。
題名の意味するところは、強奏のダイナミックな高揚の後の静まりへの過程と、何よりそこに去来する思索的内面性を象徴するものとして理解して頂きたい。
この曲の基盤には、メシアンから感化と影響を受けた倍音のモードがある。それは、より本質的な音響を希求するためでもある。その中心となる基音はD 音であり、その上下半音階の基音の揺れが自由な展開上の鍵となっている。形式上の頂点では基音E 音上の倍音が、ピアノ全体に共鳴する。つまり、広義の調性が内在するとも言える。
現代日本のピアノ曲は、20 世紀以降の作曲界の動向を反映し、末梢神経的にあまりに個別化し、
一概に語ることは到底できない。
森会員も私の作品も、大きく種別するなら、音楽芸術上における伝統を肯定的に革新する立場からの創作と言えるだろう。
したがって、非調性的音響に戸惑うことなく、伝統的視野から理解し、正統的に表現することが求められると言って良いであろう。
その他の例えば前衛的作品では、まず如何なる立場での創作かを知り、その視野を持たなければならない。現代における芸術表現は、過去の否定と革新という根幹が個々別々にあるからである。
会員諸氏は、古典で手一杯で現代まで手を広げる事は難しいであろうが、視野を広げることは必要だと考える。それは、演奏表現は正に今日現代においてこそ展開するからである。